【第5回】常に時代の最前線『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』【スーパーファミコン】

レトロゲームファン、BEEPファンのみなさま、こんにちは。名作の誉れ高いゲームを紹介する連載コラム『髙橋ピョン太のおニューもレトロも』第5回は、’90年代の任天堂のゲーム『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』をご紹介いたします!!

 

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』は、1991年11月21日にスーパーファミコン用のゲームとして発売されました。今でも新作が出ると世界中で大ヒットをする名作ゲームシリーズ『ゼルダの伝説』の3作目になる作品です。

 

何十年ぶりかに遊んでみたけどゲーム性は色あせてなかった

 

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のROMと、任天堂公式ガイドブック。攻略本必須でした。

 

ここで先にちょっと『ゼルダの伝説』がシリーズ化されていく流れについておさらいをしておきたいと思います。

シリーズ1作目となった『ゼルダの伝説』は、1986年2月21日に発売されたファミリーコンピュータ ディスクシステム用のゲームでした。ファミコンの周辺機器であるディスクシステムのローンチタイトル(同時発売タイトル)のうちの1本でした。記念すべき1作目の『ゼルダの伝説』は、ROMカートリッジではなく書き換え可能なディスクカードにて発売されたため、発売当初はディスクシステムを持っていないユーザーは遊べなかったことから、ちょっと『ゼルダの伝説』は憧れのゲームという雰囲気もありました。ま、それもローンチタイトルの役割ですが……。

 

『ゼルダの伝説』はディスクシステムを持っていないユーザーには憧れのゲームでした。

 

『ゼルダの伝説』は、トップビューで描画されたフィールドとダンジョンからなるアクションアドベンチャーかつRPGでもある風変わりなジャンルのゲームでした。マップはフィールドとダンジョンの2つから成り、俯瞰視点で表現されるフィールドを主人公のリンクや敵キャラクターがアクションゲームのごとく歩き回ります。

また1画面をベースとするフィールドとダンジョンは、リンクが画面の端に移動することで自動敵に画面切り替えスクロールをしながら次のフィールドやダンジョンへと1画面単位で移動していきます。ちなみにこのスクロールする画面内にいる敵やアイテムは、その画面内のみに設置されたものになります。そんな中で、敵と戦いながら、隠されたアイテムを手に入れ、また謎を解き明かしながら最後の敵を倒すゲームでした。

 

主人公のリンクが画面の端に移動すると、画面が一画面分スクロールします。

 

そして、1987年1月14日に同じくディスクシステム用のゲームとして発売された『リンクの冒険』がシリーズの2作目となりました。つまり、『ゼルダの伝説』がシリーズ化された瞬間です。しかし、『リンクの冒険』はゼルダ姫ではなく、前作で姫を助けたリンクのほうが冠となるタイトルでした。ゲームのタイトルに「ゼルダ」の文字はなくなったものの、パッケージやゲームのタイトル画面にはしっかりと「THE LEGEND OF ZELDA 2」と記されていました。

 

タイトル画面に燦然と輝く「THE LEGEND OF ZELDA 2」の文字。

 

つまり、紛れもないシリーズ作品なのですが、『リンクの冒険』は世界フィールドこそトップビューで描画されたいわゆる一般的なRPGのような雰囲気であったものの1作目のフィールドは異なりました。また、町の中や敵とのバトルになると、突然アクションゲームのような横スクロールのサイドビューになり、これもまた1作目の『ゼルダの伝説』のゲームシステムとはまったく異なったことから、これは本当に『ゼルダの伝説』シリーズなのか? という論争すら巻き起こり、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』こそがシリーズ2作目なのではないのかという人も少なくありませんでした。

 

『リンクの冒険』は、敵に遭遇したり町に入ったりすると、横スクロール画面になりました。

 

『ゼルダの伝説』と『リンクの冒険』はシリーズものだ!!

 

しかし、それを払拭したのが『ゼルダの伝説』と『リンクの冒険』のゲーム背景にあったストーリーでした……。

ハイラル王国を舞台にした冒険物語『ゼルダの伝説』は、魔王ガノンがハイラルの秘宝「力のトライフォース」を奪い、ハイラルを支配しようとします。それを知ったゼルダ姫は「知恵のトライフォース」を8つに分け、各地に隠してガノンの手から守りますが、ガノンはゼルダを捕らえ、さらに唯一それを知る乳母インパも追われる身となってしまいます。ゼルダは乳母インパにこの世界を救う勇者を探すよう命じましたが、その勇者が少年リンクだったのです。リンクはゼルダを救うために8つのダンジョンを攻略し、「知恵のトライフォース」を集めます。そして、最終的にリンクはガノンを倒しハイラルに平和を取り戻しました。それが『ゼルダの伝説』でした。

そして、リンクは16歳の誕生日に左手の甲に現れた紋章のようなアザをきっかけに、新たな冒険に出ることになったのが『リンクの冒険』の物語です。ハイラル王国はガノンの残党によっていまだに荒廃しており、リンクの血を使ってガノンを復活させようとする敵も多く暗躍していました。そんなときに、リンクはゼルダ姫の乳母インパから、初代ゼルダ姫が永遠の眠りについた伝説の話を聞き、代々の王女にゼルダと名付けるよう定められたハイラルの掟について知ることになります。そしてリンクは、初代ゼルダ姫を目覚めさせるために「勇気のトライフォース」を探す旅に出るのです。リンクは6つの神殿を攻略し、各神殿の守護神を倒してクリスタルをはめ込み、最終的に「死の谷」の大神殿で「勇気のトライフォース」を手に入れ、初代ゼルダ姫とハイラルを再び救います。

我々『ゼルダの伝説』大好きゲーマーは、『ゼルダの伝説』と『リンクの冒険』によって、この頃からリンクとともにハイラルとゼルダを救う沼にドップリと漬かってしまったのです。我々のゲーム人生は、リンク自身と人生とリンクしてしまったんです(リンクだけに)。

しかしながら、『ゼルダの伝説』と『リンクの冒険』のヒットしたファミコンとディスクシステムの時代は、今から思うとゲーム機のグラフィック解像度や色数、CPUの処理能力、それとROMカートリッジやディスクカードの記憶容量などなど、それを考えると表現力は圧倒的にチープでした。当然ながら、当時はそれが最先端テクノロジーですから、誰もチープだとは思っていません。むしろ、こんなに面白いゲームを作ってくれてありがとうという名作ゲームへの感謝の気持ちすらありました。低解像度に少ない色数なんて、我々の想像力と創造力のほうが上回っていたので、それらチープな表現力を想像力が補っており、こうしたゲームの深いストーリー性には、簡単に順応できたのでした。

 

会話等のメッセージに漢字が使われているのもすごい時代になったのです。

 

それが、スーパーファミコンの登場で家庭ゲーム機の表現力はかなりハイクオリティーなものになり、この頃になるとアーケードゲームとの差も埋まり、ゲームセンターで人気のゲームも遜色なくスーパーファミコン用に移植される時代になりました。

 

当時のスーファミは本当にスーパーだった

 

そして満を持して登場したのが『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』です。

 

就寝中にゼルダ姫の声が聞こえた、リンク。

 

4年10カ月ぶりのシリーズ新作となった『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』もまたもハイラル王国が舞台。主人公リンクが邪悪な司祭アグニムと大魔王ガノンに立ち向かう冒険譚です。触れた者の願いを叶えるという黄金の秘宝「トライフォース」が眠るハイラルの聖地で、悪しき力の存在を感じたハイラル王は七人の賢者たちに聖地の封印を命じました。しかし、司祭アグニムはハイラル王を殺害し、七賢者の末裔を生贄に捧げてガノンを復活させようとします。就寝中だったリンクは助けを求めるゼルダ姫の声を夢の中で聞き、彼女を救出し、司祭アグニムと大魔王ガノンを倒すために伝説の剣「マスターソード」を手に入れる旅に出ます。そして、司祭アグニムを追い詰めるも再び捕らえられてしまうゼルダ姫。リンクは光と闇の世界を行き来しながら、七賢者の末裔とゼルダ姫を救い、最終的にガノンを倒してトライフォースを取り戻し、ハイラルに平和を取り戻します……。

 

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のフィールド画面。

 

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のゲームシステムは、基本的には1作目を踏襲した仕様になり、トップビューで描画されたフィールドとダンジョンからなるアクションアドベンチャーかつRPGに戻りました。ただし、リンクが画面の端に移動することで自動敵に画面切り替えスクロールをしながら次のフィールドやダンジョンへと移動するスクロール単位は1画面分ではなく、ある程度東西南北(上下左右)にスクロール移動できるもう少し範囲が広いものとなりました。しかしながら、敵キャラクターやアイテムはそのスクロール画面範囲内にのみ存在するのも、1作目のシステムを踏襲しています。

 

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』のダンジョン画面。

 

また、前述しましたが『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』では、リンクはゲームの後半に光と闇の世界を行き来することになります。元々リンクが生活をしていた世界が光の世界で、このゲームにはそれと同等の大きさを持つ闇の世界が存在したのです。システム的な話でいうと、同じ広さの世界マップがふたつROMカートリッジに存在していることになり、ゲームのデータ容量も単純に倍ということになります。これは、スーパーファミコンのROMカートリッジの容量がファミコン時代と比べて相当増えたことがなせる技でした。

 

光の世界のマップ。これと同じ広さの闇の世界があります(ネタバレになるので載せませんが)。

 

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』は、8メガビットのROMカートリッジを使用していたので、バイトにすると1メガバイトの容量がありました。『ゼルダの伝説』のディスクカードの容量は両面で896キロビット、バイトにすると112キロバイトでした。単純に容量だけを考えると、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』はディスクカードの8.9倍の容量を扱えたことになります。スーファミとファミコンではグラフィックやサウンドにかかるデータ量も大幅に違いますから、単純な容量の計算だけで性能を比べることはできませんが、とにかくゲームの世界観が大幅に広がったのは確かでした。

ちなみにファミリーコンピュータ ディスクシステムの名誉のためにいっておきますと、ディスクカードの容量は当時のファミコン用の平均的ROMカートリッジの約3倍の容量がありました。ですので、『ゼルダの伝説』や『リンクの冒険』もすごかったんでよね。

というわけで、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』の表現力の進化は一目瞭然で、もう我々の想像力と創造力で補完する必要もなく『ゼルダの伝説』の世界観にドップリと漬かれる時代になったのです。

 

たとえば『ゼルダの伝説』の泉はこんな感じでした。

 

『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』の泉は、こんな感じ。

 

『ゼルダの伝説』を始め『ゼルダの伝説』シリーズは何が面白いのかというと(当社比ですがw)、ゲーム内に仕組まれた謎をさまざまなアイテムを駆使してリアルタイムに謎を解いていくこと、それと隠された洞穴やダンジョン、アイテム等を発見すること、何よりも創意工夫ですべてを解き明かすことができることが面白くて、そうした発見がどんどん先に進みたくなる要素になっていくんですよね。それがハードウェアの進化とともに年々、リアルになっていく、そんな『ゼルダの伝説』シリーズが楽しみでしかたがないんですよね。あと、一見強そうな敵、異常に攻撃を仕掛けてくるボスキャラなども、ふと冷静になると倒し方などがまるでパズルのように見えてくるんですよね。もちろんアクション性も高いので、ある程度ゲーマーのスキルも必要になるんですが、純粋なアクションゲームとは違っていて、我々のようなおっさんゲーマーの反射神経でもなんとかなったりするところがたまらんのですよね~。

 

こんな怖そうな敵も、ヒラメキ次第で倒せます。

 

2026年には40周年を迎える『ゼルダの伝説』ですが、2024年もまたシリーズ新作が出るなどゲーム界隈を今でも賑やかしています。ここにこれまで『ゼルダの伝説』シリーズを年表にしてみましたが、まぁ本当によく出ましたねー。これ以外にも、リメイク版や派生ゲームも多数あります。

 

みなさん、それぞれ世代によってマイファーストゼルダのタイトルは異なると思いますが、どれも名作揃いなので歴史をさかのぼってレトロな『ゼルダの伝説』シリーズもやってみてほしいですね。それによって、ゲーム機の進化の歴史も感じられると思いますので。個人的には、今回ご紹介したもののほかにもNINTENDO64の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』なども名作レトロゲームとしておすすめですね~。

もちろんオープンワールドアクションアドベンチャーゲームへと進化した『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』だって買ってます。

 

ゼルダファンとしては、Nintendo Switchでももちろん遊んでいるのですが……。

 

まぁでも自分は、おっさんゲーマーなのでスーファミかファミコンのゲーム程度の難易度のアクション性が難しくなくってちょうどいいんですけどね。ミンナニハナイショダヨ。

©Nintendo

 

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著者紹介
髙橋ピョン太

1980年にフリーでパソコン用ゲーム開発を開始。『ボコスカウォーズ』PC-8801版の移植の仕事をきっかけにアスキー専属プログラマーになり、80年代前半~90年代にアスキーのパソコン雑誌『ログイン』の編集者に転向。
その後は、どっぷりと編集につかり、『ログイン』6代目編集長を経て、ゲーム、IT系ライターとなり、現在に至る。Xではレトロなハードやゲームについてつぶやいています。
髙橋ピョン太のX(https://twitter.com/pyonta)

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