PC-8801は1981年11月に発売されたパソコンです。1979年に発売されヒットしたPC-8001の上位互換機として228,000円で発売されました。この時はビジネス用途をメインとして発売されました。ただエニックスのゲームホビープログラムコンテスト最優秀プログラムを取った「森田のバトルフィールド」や次点の「ドアドア」、そして「ゼビウス」風シューティングとしては完成度の高い「アルフォス」に国産RPGの先駆けとして発売された「ブラックオニキス」等多数のゲームソフトがPC-8801用に発売された事もありその後はホビー用機種の一つへとなりました。
その後ディスクドライブ(model10はドライブ無し)と漢字ROM、そして単音の音源を追加したPC-8801mkIIを発売しますがPC-88シリーズを8bitレトロパソコンの王者としたのは1985年1月に発売したPC-8801mkIISRが登場してからです。mkIIまでは他機種に比べ貧弱だったサウンド機能にはFM音源標準搭載、更に遅いという事で有名だった(夢幻の心臓が顕著です)グラフィック処理も改善し、ATARI端子ジョイスティックポートやアナログRGBも搭載されるとホビー用途としてはこの当時無敵のスペックを誇っていました。PC-8801mkIISR用として登場したロボットアクションゲーム「テグザー」は滑らかに変形するアニメーション、FM音源の力強いBGM、そして多方向スクロールとSRのスペックを十分に誇示しているタイトルでした。
PC-8801mkIISRがヒットを飛ばした後は1985年11月に廉価版のPC- 8801mkIIFRと高級機PC-8801mkIIMRを発売します。その間にSRmodel30にモデム電話を追加したPC-8801mkIITRを発売しますがパソコン通信がまだあまり注目されていなかった事もあり88シリーズの中で1,2を争う出荷台数の少なさではないかと思います。
PC-8801mkIIFRは拡張スロットを2つ減らし、その結果定価も2ドライブ型のmodel30は80000円安くなっています。丁度発売した時期は国産パソコンゲームブームが起き「ザナドゥ」や「ハイドライド」、「夢幻の心臓II」など今でも名作と言われているRPGが発売されたのもこの時期ですので、FRの発売を機に88ユーザーになった方もかなりいらっしゃると思います。一方PC-8801mkIIMRは増設RAM128Kバイトを増設し、第二水準漢字ROMを内蔵、データレコーダ端子が削除されています。そして今後発売される型番にMが付く機種には2Dと2HD両 対応のフロッピーディスクドライブが内蔵されています。2HDドライブのバッチンバッチンとなる音はNECならではないでしょうか。余談ですがPC- 8801mkIIFRのパンフレットではFDDの無いモデルでディスク専用の「らぷてっく」を遊んでいる写真があり一体何がどういう事なのか気になってしまいます。
PC-8801mkIIFRmodel10でらぷてっくを遊ぶカップル(クリックすると拡大します)
PC-8801mkIIFRとMRの翌年、1986年11月にはCPUを変更したPC-8801FHとPC-8801MHを発売します。この頃から斉藤由貴がイメージキャラクターになっています。大きな特徴としてはクロック周波数を従来の4MHzと8Mhzの切り替えが出来るようになっています。ファイアーホークやヴェイグスなど88末期には8Mhzで動かす事を前提に作っているアクションゲームが多数、中には専用ソフトである「プラジェーター」も発売され今後のスタンダードになっていきます。またデザインも小柄になりディップスイッチ削除とそれに伴うキーボードのデザイン変更がされています。
その4ヶ月後にはPC-88シリーズ唯一のブラックモデルであるPC-8801FH- 30とモニタPC-KD862ブラックを発売しています。最後のカセットテープ対応機であり唯一のブラックモデルですので、これに後述のサウンドボード IIを搭載させた物が究極の88としてマニアの中で非常に人気があります。その後は1987年3月に出たPC-88VAを挟み11月にはPC-8801FAとMAを発売します。これはFH、MHにサウンドボードII機能(YM2608・OPNA)を搭載させデータレコーダ端子を削除した物になります。この一月前には従来機種PC-8801mkIISR/MR/FR/TR用にサウンドボードII(PC-8801-23)とFH/MH用サウンドボードII(PC-8801-24)を発売していますので従来機種でもサウンドボードIIの凄さを体験出来ます。
サウンドボードIIはステレオFM音源6音とリズム6音SSG3音にADPCM1音を備え、従来のモノラルFM音源3音とSSG3音に比べるとかなりのパワーアップをしています。古代祐三氏作曲の「ザ・スキーム」や「ミスティブルー」といったタイトルに「スナッチャー」「ファイアーホーク」「バーニングポイント」「REVOLTER」等ゲームミュージックマニアを中心に今でも熱い支持のあるタイトルが多数あります。
1988年10月にはFHの廉価機種であるPC-8801FEとMAの廉価機種PC- 8801MA2が発売されます。FEはMSXに対抗したのか徹底的にコストダウンが図られたのとビデオ出力があるのが大きな特徴です。その結果V1/V2の切り替えスイッチとN-88BASIC、そして拡張スロットが削除されました。2ドライブ搭載で定価が129000円、更に豊富な過去の資産…とお手頃感がありましたが、88年末となると1年前にはX68000も発売されており上位機種のPC-98シリーズへの移行も進んでいたのでFEは成功したとは言いづらい機種になっています。同時に出たMA2はMAからV1/V2切り替えスイッチが削除され、その分定価もMAに比べ30000円安くなっています。
1989年10月にはPC-8801FE2が、翌月11月にはPC-8801MCが発売されます。FE2はクロック切り替えスイッチが削除され定価も10000円安くなっています。PC-8801MCは88最後の機種で縦置きデザインに変更され、model2ではCD-ROMドライブを搭載しています。このドライブはPCエンジン用と同じ(MC用はCD-ROM、PCエンジン用はCD- ROM2と書いてある違いはありますが)です。CD-ROMを使ったソフトはmodel2に付属していた「CDたから箱」とスタジオWINGの 「MIRRORS」のみではないでしょうか。
PC-8801MCを最後にPC-8801の名前の付く機種は終わりましたが、1990年10月に発売されたPC-98DO+はPC-98と88両対応しているマシンですのでDO+が本当の最後です。サウンドボードIIも標準で搭載されていて更にはPC-98のゲームも出来るのですが、88ユーザーは素直に98を買えば済むという事もあり余りヒットしませんでした。