どうもこんにちは! BEEP秋葉原店の店長・天元中です。
BEEPはアーケードゲームの買取・販売に力を入れていることはみなさんご存じでしょうが、今回は個人的にも推しているexA-Arcadiaについて、開発スタッフへのインタビューをお届けします(むしろ今まで何でやってこなかったのかと…笑)。
現在のシーンで「従来のビデオゲームでも最高のエンターテイメントとして通用する」と実証しているexA-Arcadiaは、どんな人たちによって作り上げられているのか? どのような意思でタイトルがリリースされているのか? そのほか、新作の『東方スカーレットディアブロ』のことなど、気になることをまとめて聞いてみました。かなり興味深い回答が多く、exA-Arcadiaにまだ触れていない人たちにもお楽しみいただけるはずです。
まずはexA-Arcadiaの主要スタッフのパーソナリティを軽く紹介してもらいたいです。代表作や、手がけている作品のタイトルを教えてもらえますか?
開発部 部長 エリック大統領
代表作品
①exA-Arcadiaプラットフォーム全体
②功夫VS空手道
③忍者戦記シャドウギャングX
作品リスト
exA-Arcadiaシステム基板
オーメン・オブ・ソロー 目覚めし混沌
功夫VS空手道
食魂徒<シクホンド> 赤煉獄
シノルビー PINKレーベル
忍者戦記シャドウギャングX
ノイズ アーク・コーダ
開発部EXA-AM2課長 TRPアレックス
代表作品
①怒首領蜂最大往生 EXAレーベル
②赤い刀 EXAレーベル
③P-47 ACES改
④EXAレーベル第6弾
作品リスト
赤い刀 EXAレーベル
怒首領蜂最大往生 EXAレーベル
P-47 ACES改
アクセルシティ2 ※共同開発
稲歩町ダイナマイトボム!! ※共同開発
インフィノスEXA ※共同開発
カンブリア・ソードAC ※共同開発
星霜鋼機ストラニアEX ※改善のみ
開発部EXA-AM1課長 MOFマイク
代表作品
①ギミック!EXACT★MIX
②サムライスピリッツ零SPECIAL完全版
③BATSUGUN EXAレーベル
④EXAレーベル第5弾
作品リスト
アストロ忍者マンEXA
ギミック!EXACT★MIX
キラキラスターナイトexa
コットンロックンロール
サムライスピリッツ零SPECIAL完全版
BATSUGUN EXAレーベル
平安京エイリアン3671 ※共同開発
カオスコードEXA ※改善のみ
風雷の騎士団 ※改善のみ
exA-Arcadiaのスタッフはエリック大統領をはじめ、全員がかなりのゲーマーだと聞いています。みなさんの好きなゲームとその理由を教えてください。たくさんあるとは思いますが、最大3タイトルに絞って選ぶとしたら、どのようなタイトルになりますか?
エリック大統領:
① イースⅠ・Ⅱ(PCエンジン/アルファシステム)
② ウルティマⅥ(FMタウンズ/ORIGIN)
③ バーチャファイター4エヴォリューション(アーケード/セガ)
①はPC版からの最高のアレンジで、プレイ感もすばらしく、今でも感動できるアクションRPGですね。②は善行だけでなく、悪行もできる自由度の高いRPGとして評価しています。③は対戦格闘ゲームとして現代でも最高のゲームシステムをもっていると思っています。
TRPアレックス:
① サンダードラゴン2(アーケード/NMK)
② ビートマニアIII(アーケード/コナミ)
③ キングブリーダー(PC-88/アーテック)
僕は、ジャンルを超えて多くの種類のゲームを楽しんでいる自負がある。それは、自分に多くのインスピレーションと知識を与えてくれるからです。
MOFマイク:
① エスプレイド(アーケード/ケイブ)
② バトルガレッガ(アーケード/ライジング)
③ スーパーストリートファイターⅡX(アーケード/カプコン)
僕は長いストーリーのゲームをプレイする時間も忍耐力もないのです。台詞やカットシーンよりも、ゲームプレイから世界観を感じ取って、補足資料から詳細を把握することの方が楽しいと思います。
アーケードゲーム、特にシューティングの場合、1クレジットでクリアするようなスーパープレイヤーでもプレイ時間は短いです。
長い時間をかけて新しいものを発見していくような奥深さというものもいいですが、短時間のプレイが繰り返されるアーケードゲームで、デザインのニュアンスを犠牲にすることなく没入感を楽しめることが僕の性に合っています。
exA-Arcadiaがリリースされてから4年経過しました。日本や海外での市場、ユーザーの反応に対してどのように感じていますか?
エリック大統領:
弊社は当初、2019年11月27日にexA-Arcadiaシステム基板と同プラットフォームの第1弾タイトル『アカとブルー タイプレボリューション』を日本で発売しました。その数ヵ月後の2020年初頭、コロナ禍が始まり、日本が国境を閉鎖する直前に、米国への販売を開始しました。コロナ禍の影響により、世界各国でロックダウン等社会的な制限措置が講じられ、多くのゲームセンターが営業不振で閉店を余儀なくされることなど、世界アミューズメント施設業界は大きな落ち込みを見せました。ベンチャー企業として、多くのハードルを乗り越えなければならないことは予想していましたが、exA-Arcadiaは当初から、全世界のオペレーターがこれまでに経験したことのない厳しい環境に直面しました。このような状況にもかかわらず、弊社はビジネスを成長させ続け、各地域の独特な特徴を学びながら、コンスタントに新しいタイトルを発売してきました。世界は広いし、我々は一部の地域で規模拡大をまだ始めたばかりです。
TRPアレックス:
すべてのお客さんに感謝しています。僕の作品で積極的にスコアアタックするプレーヤーがいるとは夢にも思っていませんでしたし、一般的な評価も素晴らしいものでした。より多くのユーザに楽しんでいただけるよう、これからもexA-Arcadiaを導入してくれる店舗が増えることを願っています。
MOFマイク:
僕が作ったタイトルを喜んで試してくれる人たちにはいつも感謝しています。彼らがスコアのテクニックを発見し、僕が当初設計したり知っていた以上のシステムを学ぶのを見るのは、いつも嬉しい驚きです。
『怒首領蜂最大往生 EXA LABEL』や『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』のように、そのジャンルに対して強いアピール力を持つタイトルだけでなく、かなり趣味性の強いものもラインナップにありますが、どういう基準で開発タイトルを決めているのですか?
エリック大統領:
弊社は、自分たちが好きなゲーム、または市場のニーズに応えるタイトルを選択して開発しています。
TRPアレックス:
僕は、発売当時は売れなかったゲームや、見落とされている魅力のあるゲームをリマスターするのが一番面白いと思います。売れたゲームをリマスターする場合、すでによく知られていて、最初に成功した点を崩さずに改善するのは難しいし、あまり意味があるとは思えません。しかし、不成功に終わった欠点のあるゲームをリマスターする場合は、その欠点を補って、当時、正当な評価を得られなかった魅力を引き出す余地があって、とても意義深いです。
MOFマイク:
ゲーム開発のためのタイトル選択に影響を与える要素を分析すれば、「ゲームセンターに向いていること」、「スタッフの好み」、「商業的なアピール力」、「開発にかかる時間」、「開発の難しさ」等が重要なポイントだと思います。
ロケーションだけでなく、プレイヤーや個人ユーザーもexA-Arcadiaはこれからも楽しんでいけるものなのか気にしています。率直にいって、商業的に順調ですか?
エリック大統領:
心配しなくていいです(笑)。exA-Arcadiaは黒字企業であり、事業規模を拡大し続けています。より多くのタイトルを市場に投入するため、新しいタイトルや技術に積極的に投資しています。
海外での展開では、どこが一番市場として大きいですか?
エリック大統領:
日本外のアミューズメント施設業界は、特にアメリカでは縮小しているという大きな誤解がありますが、現実はまったく逆で、地域全体で新規出店が伸びており、既存店の売上も伸びています。現在、弊社は北米市場で急速に拡大しています。
日本のアーケードゲーム業界に対して、どのように感じていますか?
エリック大統領:
日本のアミューズメント施設業界は、長い歴史を持ちながら、現在の海外ロケーション運営方法と乖離しているという点でガラパゴスのようだと感じていますね。メーカーは、オペレーターから従量課金として収益を奪い、オペレーターがバージョンアップをしないとゲームの稼働ができなくなる「GaaS(ゲームのサービス化)」のビジネスモデルに変化しています。このようなスタイルは、海外ではほとんど受け入れられていません。
国内では多くのゲームセンターはプライズセンタ―にシフトしつつありますが、海外ロケはプライズ機のみの稼働ではお客さんが来なくなることがわかってきました。その理由はファミリーのお客さんにとってプライズ機のコストパフォーマンスがよくないからです。数時間かけて遊びたいのにプライズ機を遊ぶと20分以内におこづかいを全て使い果たしてしまうでしょう。したがって、米国ロケーションでは、アミューズメント施設機材の稼働率は、6割がリデンプション(プライズ)、4割がビデオゲームというのがスタンダードになっています。
海外と日本を比べて、ウケるゲームの違いはありますか?
エリック大統領:
海外のお客さんは一般的に日本よりもカジュアルです。1コインクリアやスコアにこだわるよりも、家族や友人、職場の同僚と一緒にゲームを楽しみたがるのです。日本と違って、海外では同じロケーションでアルコールを販売することができるので、20代から30代の大人向けのロケーションが多くなっています。欧米市場では、日本よりも暴力や成人向けコンテンツが許容されているため、ビデオゲームの設置場所は、一般的なファミリー向けの場所から、バー、ストリップクラブ(風俗店)、映画館などに広がっています。
日本では、『東方電幻景』や『アクセルシティ2』のようなコアなタイトルが人気である一方、海外では、『ニッポンマラソンターボ』や、より見た目がリアルな対戦格闘ゲーム『功夫VS空手道』のようなexA-Arcadiaのパーティープレイ・タイトルが海外では人気を博しています。
これから日本でexA-Arcadiaをより広めていくためのプランはありますか?
エリック大統領:
既に過去のexA Live放送でもお知らせしておりますが、今春より全国に汎用筐体含めてexA-Arcadiaシステム基板・ソフトのリースを開始いたします。また、対戦格闘ゲームの全国大会の開催も予定しております。
exA-Arcadiaのタイトルをプレイすると、【圧倒的な操作感(低遅延)】と【快適なアレンジ力(EXAモードでのゲームバランスの良さ)】を強く感じます。開発でこだわっているポイントを教えてください。
エリック大統領:
単純に、弊社の社内開発チームは、入力遅延やスキャンライン表示などの問題を理解しているコアなゲーマーで構成されています。スタッフの中には元プロゲーマーやトップスコアラーもおり、プレイヤーが何を期待しているか、何を遊びたいかを理解することは、我々にとってごく自然なことなのです。弊社は常に、自分たちの好みに基づいてゲームに最高のパフォーマンスを要求し、ゲームを気持ちよくプレイできることに重点を置いています。
TRPアレックス:
これらの点は一見無関係に見えるかもしれませんが、我々は何よりもまず、プレイしていて楽しいと感じられるゲームを作ることに多くの注意を払っています。レスポンスの良い操作性は楽しさの源泉とは言えませんが、その逆は、自分の意図した通りにゲームを動かすことが難しいため、ゲームを楽しく感じなくさせます。
僕のアレンジにおける基本的な哲学は、原作の長所を強調し、深みを増し、表面的なレベルで根本的に満足できる要素を加えることです。そうすることで、スーパープレイヤーやカジュアルなユーザだけが楽しめるシステムを作るのではなく、あらゆるレベルのプレイヤーがゲームを楽しめるようになりますから。
MOFマイク:
入力遅延は、ゲームに難易度を認識させる漠然とした要因を加えるものですね。プレーヤーが直面する難題を人工的に膨らませるというか…。最悪なのはランダムな弾幕パターンや、体力のありすぎるボスと違って、ユーザになぜ苦労するのか気づかせにくいことなのです。数フレームの遅延があるだけで、ニアミスが死に変わったり、タイミングよくジャンプしたつもりが落とし穴に落ちたりすることなど。これをプレーヤーが補うことは可能ですけど、基本的に入力遅延はプレーヤーに対して不誠実です。
『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』の開発から、僕は入力遅延に対して強く意識し始めました。…というのも、じつは当時の開発段階でexA-Arcadiaの入力遅延はネオジオMVS基板よりも1フレーム遅かったのです。さまざまなプログラム技術を駆使して、僕は突然、入力反応のパフォーマンスを向上させることができました。そこから、限界に挑戦する価値があると感じて、今も取り組み続けています。
結果として、『サムライスピリッツ零SPECIAL完全版』はMVS版より遅延のないものになっていますが、僕は最初から入力遅延を最小にすることが重要だと考えています。
発売からしばらく経過したタイトルでも細かなアップデートをしている理由は?
エリック大統領:
ゲームがリリースされた後にバグが発見されたり、パフォーマンスを向上させるための新しい技術が開発されたりすることもあります。また、プレーヤーがタイトルのバランス問題や安置を発見することもあります。我々自身もゲーマーとして、お客さんにゲームを楽しんでいただきたいと思っています。
TRPアレックス:
我々は、プレーヤーにできるだけ欠点や不行跡の少ない体験を楽しんでもらうことが重要だと考えています。しかし、それにもかかわらず、我々はまた、これまでゲームを楽しんできたプレーヤーが突然プレイ方法を変更しなければならないことがないように、プレイ体験をできるだけ変えないように努めています。
exA-Arcadia未体験のゲーマーに、まずプレイしてもらいたいタイトルをいくつか挙げるとしたら?
エリック大統領:
シューティングだったら『東方電幻景』『ヴリトラ・ヘキサ』、対戦格闘なら『アクセルシティ2』『稲歩町ダイナマイトボム!!』、アクションでは『魔界と闘姫マデリン』『忍者戦記シャドウギャングX』あたりをプレイしてもらえたら、exA-Arcadiaの実力や可能性を感じ取っていただけると思います。
TRPアレックス:
最初に試すexA-Arcadiaタイトルは、自分のお好みに合わせた方がいいと思います。90年代シューティング好きな方は『P-47 ACES改』を、現代の弾幕シューティングは『アカとブルータイプレボリューション』を試してみるといいでしょう。90年代格ゲー好きな方には『アクセルシティ2』、アニメ系格ゲーなら「稲歩町ダイナマイトボム!!」もおすすめ。レトロなゲームが好きな人は『ドーナツドードードゥ!』を、セガの『忍』のようなアクションが好きな人は『忍者戦記シャドウギャングスX』を遊んでください。
MOFマイク:
今までで一番苦労して開発したタイトルは『BATSUGUN EXAレーベル』です。そのぶん、自信もあるから「KIWAMIモード」を遊んでいただきたいと思います。
一般向けタイトルでは『ドーナツドードードゥ!』『キラキラスターナイトexa』、縦シューティングは『BATSUGUN EXAレーベル』『怒首領蜂最大往生 EXAレーベル』ですね。横シューティングは『P-47 ACES改』『ヴリトラ・ヘキサ』、対戦格闘では『アルカナハート3LMSSS!!!!!!XTEND』『アクセルシティ2』を挙げておきたいです。
『東方電幻景』から約1年半ぶりに『東方スカーレットディアブロ』が出ました。やはり『東方電幻景』はロケーションやユーザーの反応がよかったのでしょうか?
エリック大統領:
基本的に、東方シリーズのシューティングゲームは、アーケード弾幕系ファンとは異なる層にアピールしています。
『東方電幻景』では、東方ファンの方々に初の東方アーケード作品を楽しんでいただくと同時に、古くからのアーケードゲーマーにも東方シリーズの人気の理由を知っていただくことを目指しました。このゲームのロケテストでは、終日長蛇の列がゲームセンターの数フロアをぐるりと取り囲む光景を目にしました。オペレーターからは建設的な意見をいただき、『東方スカーレットディアブロ』に反映させています。
今後も『東方』シリーズ展開はありますか?
エリック大統領:
はい、EXA東方シリーズの次回作品にご期待ください。
編注:じつは『東方スカーレットディアブロ』をクリアすると次回作の予告があるというウワサ…
最後に。今後の展開についてPRをお願いします。
エリック大統領:
お客さんやファンの皆様のおかげで、exA-Arcadiaはビデオゲームのグローバルリーダーとなりました。これからもファンの皆様が期待する、業界をリードするパフォーマンス(入力処理など)と各タイトルの決定版を提供していきます。2024年の新作シューティングゲームと対戦格闘ゲームの発表にご期待ください。
…以上、いかがでしたか? 先日の「シュー大祭」では『アクウギャレット』や『フィグゼイト』といった新作紹介だけでなく、『ラジルギ』のRS34の参入もアナウンスされ、着実に勢力を拡大しているexA-Arcadia。アミューズメント施設には厳しい時代といわれている中でも設置店は増えており、プレイできる場所も整いはじめています。これからもexA-Arcadiaでの注目タイトルやニュースがあれば、積極的に紹介していく予定です。どうぞお楽しみに!!
なお、ちょっと金銭面でのハードルは高めですが、個人購入もイイですよ…(笑)。
【余談】BEEPには各種ゲームの動作チェックをする機材ルームがあるのをいいことに、天元中は私物のexA-Arcadia環境を持ち込んでいます