今回は、東京都墨田区のお客様より依頼された『PCエンジン LT』のオーバーホールをやっていきます。
こちらのハードは、PCエンジンの派生型モデルで、1991年に発売されました。
4インチサイズの液晶ディスプレイとコントローラーが本体に組み込まれており、あとはゲームをセットすればすぐに遊べる…という仕様です。
名称の「LT」とは「Lap Top」の略で、”ひざの上に乗せて使える”小型のPCエンジンであるという設計がそのまま商品名になっています(ただ、実際にプレイするときには手に持つことになります…笑)。一見すると携帯機のようなサイズ感ですが、バッテリーではなくACアダプタを使って電源供給をするため、屋外で自由に使うことはできません。
※携帯機としては『PCエンジンGT』が1990年に先行して発売されています
定価は99,800円と、ゲーム機としてはトップクラスの高価格だったため、購入できた人はあまりいなかったのではないでしょうか。
…さて。修理に話を戻しましょう。
今回の症状としては、映像が映らないとのことです。
動作確認したところ起動はしているようですが、画面は真っ黒です。
音は出ているのでゲームも起動しているみたいです。
▲電源を入れてみたところ。起動ランプは点灯していますが、画面には何も表示されない状態でした。
この機種は、様々な原因で複合的に故障が起きて、動作不良として現れるケースが多いのです。
原因と思われる1箇所だけを部品交換しても、別の箇所が原因で起きる故障のせいで直らず、結局ほぼ全部のコンデンサを交換するはめになることが多々あります。
そのため、もう最初から全部のコンデンサを交換してしまったほうが早いです。
もし全部交換しないで直ったとしても、交換しなかった箇所も近々寿命が来ると思うので、1回でまとめて交換するほうが結果として手間が省けます。
それでは修理兼オーバーホールを開始します。
▲本体底面部。ネジ留め箇所はすべて見えるようになっています。
まずは、本体底面のネジをはずしていきます。
底面のネジは5本あります。
これでコントローラー部が分解できるようになります。
▲すべてのネジをはずしたら本体カバーを持ち上げます。
▲電源コネクタの隣にあるフレキシブルケーブル(×3)。丁寧に持ち上げましょう。
▲本体上部を持ち上げるとメイン基板の保護用のプラパーツが見えます。
▲保護用のプラパーツをはずしたところです。
そのまま分解していくのですが、配線が繋がっているので勢いで切らないよう注意します。
フレキシブルケーブル3本とスピーカーの配線を切らないように外します。
▲本体の左側にある白いコードがスピーカー用の配線です。
▲正面からみるとフレキシブルケーブルは1本ですが、すぐ後ろに2本あります。
▲フレキシブルケーブルとスピーカー配線をはずせば本体を上下に分離できます。
次に、基板をはずします。
▲本体下部に収まっているメイン基板です。
続いて、電解コンデンサの交換に邪魔なのでHuカードのコネクタ部分やイヤホンのジャック、
基板についているシールド板を外します。
端子が裏側でハンダ付けされていて、端子の数が多いのでハンダ吸取器がないと難しいでしょう。
また、外す際に端子を曲げたり、破損させないよう気をつけます。
▲Huカードのコネクタ部など、コンデンサ交換の邪魔になる部品をはずします。
外したらそのまま電解コンデンサの交換をやります。
注意としては、プラ部品などが近くにあるため、溶かさないように気をつけます。
▲コンデンサ交換後のメイン基板になります。
あとは、元通りに組み上げていきます。
フレキケーブルを挿すところがなかなか難しいです。
折り曲げないよう気をつけます。
最後に動作確認します。
▲まずは起動チェック。タイトル画面は問題なし。
▲続いてゲームの動作チェック。
▲特に不具合がないとわかっても3面の巨大戦艦まではプレイします(笑)。
映像も出力されて、ゲームも問題なくできておりますので、これで修理完了です。
今回のPCエンジンLTは現存しているもので電解コンデンサの交換をしていない本体は、映像が映らなくなっているものが多いかと思います。
自分でやってみようと思っても、コンデンサの交換は表面実装のため、経験者でなければ難しいと思います。
BEEPでは今回のPCエンジンLTをはじめ、レトロハードの修理・オーバーホールを受け付けていますので自信のない方はお気軽にご依頼ください。
どうぞよろしくお願いいたします。