宮崎駿が手がけたアニメ作品のなかでも『風の谷のナウシカ』は特別です。
国内外でさまざまな賞を獲得し、スタジオ・ジブリを設立する契機になった作品ですし、久石譲がはじめて音楽担当したこともファンには重要なポイントですね。
2019年には尾上菊之助や中村七之助らによる新作歌舞伎として上演されたことも、その存在感を増したように思います。
しかし、作品内容の関係なのか、キャラクターグッズなどの関連商品は少なく、当時はツクダホビーのプラモデルくらいしか目立つものはありませんでした。
今回ご紹介するパソコンゲーム版『ナウシカ』も、かなり希少なアイテムとなっています。スポンサーだった徳間書店のPC雑誌「テクノポリス」のレーベルから発売していたにもかかわらず、ほとんど世に残っていないのです。
“ゲームの出来がよくなかったことに宮崎駿や高畑勲が激怒した”
“ジブリ作品のゲームが出ないのは『ナウシカ』ゲームが圧倒的黒歴史だから”
など、都市伝説のような逸話があるこのゲーム、じつはBEEPでも全3作がそろったことがありません。
兵庫県神戸市の出張買取でお譲りいただいたPCソフト群の中でも別格のレアタイトルでした。
それでは見ていきましょう!
『ナウシカ危機一髪』(対応機種:PC-6001mkⅡ、PC-6601)
まずは“危機一髪”とスリリングなタイトルのつけられたP6版から。
「テクノポリス・ゲームソフト・コンテスト当選作(キャラクター部門優秀作)」と銘が打たれていて、ファンメイドのゲームを製品化したものであることがわかりますね。
メディアは6001ユーザーを意識したカセットテープになっていて、お値段も一番リーズナブルです。
メモリ容量の都合で、デモパートとゲームパートは別々に立ち上げなければいけません。
とはいえ、デモは毎回見ることもないでしょうし、合理的な設計ともいえます。
デモは劇中に使われていた「鳥の人」をBGMに、ストーリーが語られ、ナウシカとテトのビジュアルが表示されます。アニメの絵と比べてしまうと、どうしても見劣りするのは否定できませんが、ハードウェア的にはかなり頑張って再現していると思います。
ゲームは「アーケード・ゲーム」とパッケージに書かれていますが、内容的には横スクロールのシューティングです。ガンシップを操り、飛行瓶や浮き砲台を撃墜していきます。…が、敵キャラクターの動きがかなりトリッキーで、陸地も障害になるため、なかなか先に進めません。
説明書には「普通の人には、少々むずかしいゲームとなっていますので、楽しんでもらえると確信しています。」とあるものの、このゲームに楽しみを見出すのは少々どころか相当むずかしいんじゃないでしょうか。
『風の谷のナウシカ』(対応機種:PC-8801、mkⅡ)
次は同じくテクノポリスのコンテスト当選作の88版です。テクノポリス大賞を獲得した作品で、ニュータイプ・アドベンチャーとのこと。
残念なことにディスク不良でゲームは起動できなかったので、パッケージや説明書から内容を推測するしかありません…。
ちなみに、ディスクは1枚のみですが「SIDE A」と謎の表記があります。
一般的なアドベンチャー・ゲームといえば、一枚絵のビジュアルを眺めながら行動を選択していきますが、このゲームでは表示されているシーンでナウシカを自在に動かせるのが特色のようです。
マップの奥行きに応じてキャラクター表示サイズも変化し、立体感を演出している模様。
現在のハードからすればかなり貧弱なスペックで実現していることで、プログラム技術の高さがうかがえます。
そのぶん、説明書にも「絵は少々荒くなっています」と注釈が入っていますが、キャラクターゲームで絵を犠牲にするのは賛否のわかれそうなところです。(愛情でカバーしてほしい気もします)
アドベンチャーのパートを進めていくと、フライト・シミュレータに切り替わる場面もあるようです。
「なぜこれをナウシカで???」と感じなくもないですが、とにかく3D表現に対する意欲が旺盛なことには感心します。
どこで出てくるかわからないビジュアルシーンは、88のグラフィック性能をじゅうぶんに活用している様子。
パッケージにはいっさい掲載されておらず、色合いを実際に見られないのが惜しいですね。
『忘れじのナウシカ・ゲーム』(対応機種:MSX)
最後に、どうしてこんなタイトルをつけたのか、悪い意味で忘れがたい存在になってしまったMSX版です。
これだけはコンテスト作品ではないため、どこかのソフトハウスかプロによる制作なのでしょうか。(最後までプレイする前に気力が尽きたので、未確認です…)
P6版と同じく、アーケード・ゲームというジャンル表記の横スクロールシューティングになっています。
単色ながらもメーヴェの特徴をつかんだドットアートや、圧倒的な高速スクロールなどが注目すべきポイントです。
しかし、実際に遊ぶとなるとスクロールの速さが仇となって操作ミスを起こしやすく、まともにプレイするのは至難の業。
カートリッジには操作方法が記載されており、スーパーカセットビジョンを彷彿させますね。
「キーボードよりもジョイスティックを使った方が操縦はしやすいぞ!」とパッケージに書かれているものの、
結局キーボードも併用しなければいけません。しかもスペースキーと大きく離れたファンクションキーを使う極悪仕様!(苦笑)
ステージには王蟲が登場し、ゲームの進行にも影響がある(間違って攻撃すると風の谷が滅ぼされる)といったナウシカらしい世界観も盛り込んではいますが、
とにかくプレイしづらい!! …という印象の強いゲーム内容です。
P6版のデモや88版のビジュアルシーンのようなグラフィックもなく、プレイを続けるのには相当な精神力を要求されます。
…ま、『ナウシカ』三部作(…と、マニア筋では言われているそうです)はどれを遊ぶのも相当大変なんですが!!!
【おまけ話】
それぞれのパッケージにかかれている謎のロボットは、「パコ」といいます。当時のテクノポリスのマスコットキャラクターで、デザインはアニメーターの佐藤元氏。『水晶の龍』のキャラクターデザイン・作画を手がけたことでも有名な方ですね。「まつもとみな」名義で日ペンの美子ちゃんの漫画を描いていたこともありますし、最近では『きんいろモザイク』の原画や『ソンビランドサガリベンジ リベンジ』の作画監督も担当しています。…凄い!!
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