今回は、茨城県水戸市のお客様より依頼されたPCエンジンGTのオーバーホールをしていきます。
これは1990年にNECから発売された、PCエンジンシリーズの携帯用ゲーム機です。
当時国内のコンシューマー機では任天堂、セガ、NECが覇権争いをしてましたが、携帯ゲーム機市場では任天堂がいち早くゲームボーイをリリースし好調。ファミコン人気も相まって独壇場だったんですが、後年にNECが出したこのGTは携帯機市場にあって異色の存在でした。
他の2社の携帯機と違い、同社の据え置き機であるPCエンジンのHuカードをそのまま遊べるというのが個人的には一番高評価なポイントでした。
当時は学生だったので手持ちのソフトを遊べるというのはありがたいですよね。
と、発売まではワクワクしてたんですが・・・、実際はライバル機と2倍以上の価格差があってリーズナブルじゃなかったため、そもそも本機を買えなかった、というオチがあります。
さて、今回ご依頼時の症状としては、通電はするがゲームが起動しないとのことでした。
まずは動作確認としてゲームを差して電源を入れてみると、ゲームは起動せず、バックライトもほんのり光るだけでコントラストの調整もほとんど効きませんでした。
この症状ですとおそらく電解コンデンサの液漏れによる故障だと思われます。
ゲームギアのときにも書きましたが、使われている電解コンデンサから経年劣化により電解液が漏れ出してしまい、正常に機能しなくなることが原因で様々な故障を起こしてしまいます。
原因部分の電解コンデンサだけを交換しても動作するようにはなりますが、近いうちに交換していない部分の電解コンデンサが原因で動かなることが多々あります。
ということで、BEEPではピンポイント修理ではなく、予防保全として電解コンデンサの全交換での修理をしています。
では、作業に入ります。
電解コンデンサを交換するために基板にアクセスしていきます。
はじめに前面部と背面部に分解します。
裏側にあるネジ6本を外すとパカッと開きます。
前面部と背面部はケーブルが3本つながっているので
この時、勢いよく開くとケーブルが切れる可能性があるので注意が必要です。
まずは、前面部からコンデンサを交換していきます。
前面部、下側についている基板を外します。
基板を戻す前にボタンの接点クリーニングもやっておきます。
終わったら基板を戻して前面部は終わりです。
続いて背面部をやっていきます。
全面と同じように基板を外します。
背面部は先程の前面部より、とても面倒です。
まずは、ハンダ面(裏面)のシールド板を外して
外れたら次は、部品面(表面)のシールド板を外します。
交換するときに、イヤホンのジャック部品が邪魔なので先に外しておきます。
これでやっとコンデンサの交換に移れます。
コンデンサを見てみると、写真では分かりづらいかもしれませんが、やはり液漏れを起こしています。
液漏れがヒドイものになると、近くのパターンを腐食してしまい断線してしまっていることもあります。
そうなるとボタンが効かなくなるなどの故障の原因となってしまいます。
色んな種類・数のコンデンサが使われているので間違えないよう気をつけて交換します。
最後に忘れずにイヤホンジャックを取り付けます。
これで交換作業は終わりです。
あとは元通り組み立てて動作確認します。
今回はドラゴンスピリットにて動作確認します。
電源を入れると問題なくゲームが起動しました。
ボタンの効きも良好です!
以上でPCエンジンGTのオーバーホールは完了です。
今回の故障は、故障部分だけ直しても少しすると別の場所が原因となって再発する可能性が高いので、コンデンサ交換するなら全部交換してしまったほうが良いと思います。
BEEPでは今回のPCエンジンGTをはじめ、レトロゲームハードの修理を受け付けていますので是非お気軽にご相談ください。